●ここに描かれた風景が切ないほどきれいだ。まるで現実のものとは思えない。目を閉じると兄弟が雪の中を歩いていく姿が浮かんでくる。そして結末もまた切ない。私は来年50歳にもなる中年だが、年甲斐もなく涙がぽろりと落ちてきてしまう。美しい景色というのは、写真の中にあるのではなく、私たちの心の中にあるのだと思う(原田 正行)。
『虔十公園林』
●虔十のキャラクター、ひいては賢治の人柄が忍ばれ、強烈に惹かれる。賢治の作品にはデクノボー思考が垣間見られるが、この作品で、デクノボーの定義・人の価値観というものが、いかに無意味で勝手なものかを教えられているような気がする。誰一人として不必要な人間、無駄な人生というものはない、といった賢治からのメッセージがこめられているような気がして、勇気づけられる作品である(ぶつ吉)。