ところが狐の方は大へんに上品な風で滅多に人を怒らせたり気にさはるやうなことをしなかったのです。
 たゞもしよくよくこの二人をくらべて見たら土神の方は正直で狐は少し不正直だったかも知れません。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第6巻『土神ときつね』P.110」

 「今晩は、よくおいででした。先日は失礼いたしました。」といふ声がしますので四郎とかん子とはびっくりして振り向いて見ると紺三郎です。
 紺三郎なんかまるで立派な燕尾服を着て水仙の花を胸につけてまっ白なはんけちでしきりにその尖ったお口を拭いてゐるのです。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第8巻『雪渡り』P.133」

 「ね。食べよう。お食べよ。ぼくは紺三郎さんが僕らをだますなんて思はないよ。」そして二人は黍団子をみんな食べました。そのおいしいことは頬っぺたも落ちそうです。狐の学校生徒はもうあんまり喜んでみんな躍り上がってしまいました。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第8巻『雪渡り』P.136」

 で結局のところ、茨海狐小学校では、一体どういふ教育方針だか、一向さっぱりわかりません。正直のところわからないのです。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第5巻 『茨海小学校』P.433」

 「狐。お前はよくもホモイをだましたな。さあ決闘をしろ。」
 狐が実に悪党らしい顔をして云ひました。
 「へん。貴様ら3匹ばかり食ひ殺してやってもいゝが、俺もけがでもするとつまらないや。おれはもっといゝ食べものがあるんだ。」
 そして函をかついで逃げ出さうとしました。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第5巻『貝の火』P.74」


 狐は少し不正直で、土神は正直という。では土神とはなにものなのか? 土 神
 狐と人とをつないでいるものは? 団 子