そこであんまり一ぺんに云ってしまって悪いけれどもなめとこ山あたりの熊は小十郎をすきなのだ。その証拠には熊どもは小十郎がぼちゃぼちゃ谷をこいだり谷の岸の細い平らないっぱいにあざみなどの生えてゐるとこを通るときはだまって高いとこから見送ってゐるのだ。木の上から両手で枝にとりついたり崖の上で膝をかゝへて座ったりしておもしろさうに小十郎を見送ってゐるのだ。
ちくま文庫「宮沢賢治全集 第7巻『なめとこ山の熊』P.60」


 熊たちの住むなめとこ山とはどんな山なのか? なめとこ山