私にとっての賢治 English

森谷 美幸さんインタビュー

森谷さんが賢治の作品をよく読むようになったのは、いつ頃ですか?
中学3年の時に、担任の先生が宮沢賢治を好きな方で、何かの時間に「セロ弾きのゴーシュ」を読んでくれたんです。それを聴いて面白いなと思い、ポプラ社の子供向けの賢治集を自分で読んでみたんです。この頃は、「猫の事務所」とか「注文の多い料理店」とか寓話的な話が好きになりました。その後、高校に入ってからは賢治にはまった感じです。
高校時代にはどういう読み方をしたんですか?
ある時期に大好きになって集中して読み、その後は関心がなくなってしまうという読み方でなく、時々、読みたくなると読むというように関心が持続しています。
落ち込んだ時などには、「まなづるとダリヤ」のようにホンワカとした気分のものが読みたくなります。「まなづるとダリヤ」には、自分の輝きで世界を赤く染めたいと思っている赤いダリヤと、赤いダリヤをもちあげる黄色いダリヤ、それに控えめな白いダリヤが出てきます。空を飛んでいくまなづるは、赤いダリヤや黄色いダリヤに相槌を打った後で、必ず白いダリヤに「今晩は」とか声をかけてから飛び去るんです。私は自分を白いダリヤに重ねて考えるので、この部分に心が安らぐ感じがします。「どんぐりと山猫」「洞熊学校を卒業した三人」も、大きかったり、目立ったりするのがいいのではなく、平凡でも地道に生きていくのが一番いいというメッセージがあって、そこが好きです。
賢治の作品の生き物と人間の関係については、どう思いますか?
「なめとこ山の熊」のように、動物を殺さなければならない業に痛みを感じながら殺すというのに共感をもちます。動物を食べないとか、「自然万歳」というのには疑問をもちます。「銀河鉄道の夜」に出てくる、みんなの幸せのためなら自分の身体を何百回やいてもいいといった自己犠牲の精神も嫌です。


森谷 美幸さんのプロフィール
  • 1971年1月23日生まれ
  • 神奈川県藤沢市出身 A型
  • 京都市在住 京大大学院生(西洋史)
  • 賢治ファン歴13年
  • 好きな作品 「猫の事務所」「セロ弾きのゴーシュ」「まなづるとダアリヤ」「注文の多い料理店」

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