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コミュニケーションの可能性

 コミュニケーションの可能性には三つの条件がある。
 人々は各々自分の周波数をもって宇宙を観測している天文台のようなものである。私の見ているものをあなたは見ていない。あなたに見えているものが私には見えない。わたしが感じていることをあなたは感じない。というような状況が普遍的に存在する。
 コミュニケーションはこのような人と人の間でとりおこなわれる。だからこそそれは本質的に困難な作業なのである。
 どのようにしたら人と人のコミョニケーションは可能になるのか。
 第一の条件は表現である。自分の感じている事柄を表現すること。表現は共通性を確保する基本的な条件である。表現は感じた事柄を相手のとらえうる周波数の波長に合わせるということであるから、メディア変換を行うことである。相手の周波数をどの様に探知できるかが問題として残るのであるが、しかし、メディア変換を行い出力する能力をもっていることがコミュニケーションの第一の条件である。この能力さえあれば様々な試行錯誤の上に部分的であっても相手に理解される表現に辿り着く可能性がある。
 第二の条件は表現する意志である。表現の力をもっていたとしても、表現する意志が無ければ、自分の感じた事柄を相手に伝えることは不可能だ。逆にいうなら、コミュニケーションを途絶するためには、表現しないという方法があるということでもある。
 第三の条件は実際にコミュニケーションがしばしば成功するということである。どんなに表現を繰り返しても相手にとってそれが理解不能なままならば、コミュニケーションは成立しない。時々でもよいのであるが、コミュニケーションが成功する時相手の感じている事柄と、自分の感じている事柄が重なり会い、二つの天文台が共通の宇宙イメージをもつことがてききる。とはいっても、両者がもつ宇宙像が完全に一体になることはまずない。
 両者は表現を介して伝えられる世界を共有するのみであり、自分の周波数で世界を観察するという特性を捨てることはできないのである。

 共通の周波数領域を発見し拡大することが、文化であった。それは人と人の会話能力の拡大ということもできる。歴史が示す事実は会話の成立の困難さと同時に会話は成立しうるということでもある。

    
松井隼記念館運営委員会 fieldlabo@as.email.ne.jp